
「センスないなぁ…」と自分が作ったグラフを見て落ち込んだことありませんか?
「ある」と答えた方、おめでとうございます! あなたには、センスがあります。
センスがあるからこそ、グラフのダメさに気づき落ち込むのです。
もし、あなたが落ち込んだ経験があるなら、この記事は、あなたの役に立ちます。
記事の最後に、エクセルのデフォルト状態から工程毎にグラフを作成しているスライドがあります。
最後まで読んでもらえるとうれしいです。
- センスのいいグラフとは?
- 正しい努力の方向性
- 伝わるグラフを作る3ステップ
- 伝わるグラフの作成過程
- まとめ
センスのいいグラフとは? ~ 3秒で伝わるグラフ ~
センスのいいグラフの定義
そもそも、グラフとは何でしょうか?
グラフとは、データと理解の間を仲介するものです。
そして、グラフの良し悪しは、理解までのスピードで決まります。
では、センスのいいグラフとは、何でしょうか?
それは、3秒でメッセージが伝わるグラフのことです。
一般的なグラフ作成手順は、次のような感じです。
まず、グラフの種類を選び、次に縦軸と横軸を選びます。最後に装飾をして完成です。
そして、データへの理解度は、読み手の努力に委ねるスタイルです。
残念ながら、これでは、センスのいいグラフにすることはできません。
メッセージもなく、伝える努力もしていません。
伝わらないグラフは、存在しないのと同じです。
ここでは、センスのいいグラフ=3秒でメッセージが伝わるグラフと定義します。
まずは、「3秒でメッセージを伝える」という目標を持つことから、はじめましょう!
努力の方向性 ~「装飾」からの卒業 ~
残念なことに、多くの人が、努力の方向性を間違えています。
方向性を間違えていると、いくら努力しても成果が出ません。
あなたの情熱と努力は報われるために存在しているはずなのに…
では、正しい努力の方向性とは何でしょうか?
いっしょに確認していきましょう。
方向性について よくある誤解
多くの人は、センスのいいグラフには装飾が必要だと誤解しています。
「わたし、絵心ないんです…」という言葉をよく耳にします。
安心してください。センスのいいグラフに、絵心ある装飾は必要ありません。
装飾が必要と考える理由は、読み手を理解できていないからです。
読み手の基本スタンスは「読まない・信用しない・行動しない」です。
しかし、私たち作り手は、読んでくれる前提でグラフを作ります。
だから、データを可視化しただけで、完成したと考えてしまうのです。
そして、持て余した情熱は装飾へと注がれることになるのです。
わかりやすさが重要な理由
では、読んでもらうには、どうしたらいいのでしょうか?
メッセージを明快にしましょう! つまり、わかりやすくするのです。
(ここでは「わかりやすい=論旨が明快であること」と定義します)
そして、メッセージが際立つように、削除できるものがなくなるまで、削除します!
人間には、簡単に理解できるものを信用する特性があります。(=認知容易性)
だから、あなたが何かを伝えるとき「わかりやすさ」が重要になるのです。
反対に、理解できないものは恐れ、否定しようとします。
残念ながら、あなたと同じ情熱であなたのグラフを読み込んでくれる人はいません。
それを求めるのはエゴです。エゴは、ダークサイドへ通ずる道です。
エゴは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは恐れに。
そして、恐れはあなたをダークサイドへ誘います。
つまり、メッセージが明快でわかりやすいグラフは「信頼」され、
装飾重視で綺麗なだけのグラフは「否定」される運命なのです。
明快さが心を動かす例
明快なメッセージが、心を動かす例を見てみましょう。
入院しているあなたのところへ、
友人のA君とB君が、大好物のバナナを持ってお見舞いに来ました。
- A君:フルーツバスケット10種盛合せ (バナナ含む)1万円分
- B君:1本1万円のバナナ1本
A君がフルーツバスケットを選択した理由
・病室が華やかになるから
・みんなに喜んでもらえるように、たくさんフルーツがあれば間違いないから
B君がバナナ1本を選択した理由
・バナナが大好きだから、想像を超える美味しいバナナを食べて、元気になって欲しいから
5年後に記憶に残っているのは、どちらのお見舞品でしょうか?
たぶん、バナナ1本の方ですよね(笑)
記憶に残るということは、心が動いた証拠です。
わかりやすさこそ正義
バナナの例は、少し極端かもしれませんが、
わかりやすさこそが、センスの良さへと通ずる道です。
わかりやすさは心地よさに、心地よさは親しみに、親しみは信頼に。
そして、信頼できるメッセージは、相手の心を動かします。
心が動き、メッセージが腹落ちした時、人は明るい未来を想像し、行動につながるのです。
グラフにおいては、明快なメッセージだけが、心を動かすことができます。
だから、「わかりやすさ」こそ目指すべき方向なのです。
伝わるグラフを作る3ステップ ~ いいグラフは「絵画」ではなく「彫刻」である ~
センスのいいグラフには、3つのステップが必要となります。
メッセージを決める・ノイズを減らす・視線を誘導する の3ステップです。
では、各ステップを詳しくみていきましょう。
STEP 1 メッセージを決める 〜 相手が知りたいことは? 〜
メッセージを決める前に、相手が知りたいことを考えます。考え抜きます。
これが、グラフを作る上でもっとも重要な作業です。
相手が知りたいこと(問い)を見つけるコツは、実在する1人の読み手を想定することです。
問いは、解像度と重要度の2つの軸で精査します。
そして、解像度が適切かつ重要度が高いものを1つ選びます。
その問いへの答えが、メッセージとなります。
天使のように素敵なメッセージを見つけてください。
NG行為は、網羅的な問いを設定することです。
網羅的なメッセージは、校長先生の話のように、誰にも伝わることはありません。
プライドの高い人は、傷つくこと恐れます。
だから、他人から否定されることや間違いを指摘されることを避けるため、すべてを説明しがちです。
恐れは、ダークサイドへ通じる道です。
否定を恐れず、メッセージを1つに絞ってください。
メッセージを1つに絞ることで、心を動かすことができるのです。
STEP 2 ノイズを減らす 〜 削除するものが何も無くなったとき、グラフは完成する〜
次に、ノイズを減らします。
メッセージが明快になると、ノイズも明確になります。
捨てる・捨てないの判断を優先順位をつけて、
削除するものが何もなくなるまで、削除します。
グラフ作成は、絵画ではなく、彫刻を作る工程に似ています。
まず最初に、データから価値あるメッセージを見つけます。
その後、絵画のように色や線を描き足すのではなく、彫刻のように不要なものを削るからです。
ノイズがなく理解しやすいグラフは信頼されます。(=認知容易性)
1つのメッセージをわかりやすく表現することで、心を動かすことができるのです。
STEP 3 視線を誘導する
こちらが意図した順番でグラフの要素を見てもらうことで、
メッセージをスムーズに理解できるようになります。
見出しや主役となるデータは、視線が向くように目立たせます。
また、脇役のデータは、目立たないように地味にします。
目立たせる場合でも、装飾してはいけません。自然に視線を誘導するだけです。
そもそも「装飾」はジェダイの流儀ではありません。
最初に、見出しに視線を誘導し、問いを想起させます。
次に、主役データ・脇役データの順に視線を誘導し、回答を伝えます。
問い → 回答、概要 → 詳細、主役 → 脇役 といった順番にすることにより、
メッセージがスムーズに理解できるようになります。
適切な視線誘導で、理解スピードをアップすることができます。
また、情報処理が滑らかで澱みなく処理されると、好意的な感情と結びつきやすくなります。(=処理流暢性)
わかりやすい1つのメッセージを
3秒で理解できるようにすることで、心を動かすことができるのです。
伝わるグラフの作成過程 ~ いっしょに作ろう! ~
いっしょにグラフを作っていきましょう!
データ:世界55カ国におけるビッグマックの価格データ
ターゲット:ルーク君(9歳)
プロフィール
名前:ルーク=スカイウォーカー
年齢:9歳(タトゥイーン小学校3年生)
性別:男の子
居住地:日本
好きなスポーツ:サッカー
好きな飲み物:マックシェイク チョコレート
メッセージを決める
まずは、問いから考えます。
- 日本は、世界55ヵ国平均より高い? 安い?
- 日本は、アジア各国と比較して高い? 安い?
- 日本は、主要国と比較して高い? 安い?
- 日本は、アメリカより高い? 安い?
- 日本は、世界55ヵ国中で何位?
上記5つの問い考えました。
解像度と重要度の2軸で精査していきましょう。
① 日本は、世界55ヵ国の平均価格より高い? 安い?
解像度:55カ国の平均価格だけでは、解像度が低過ぎます。
重要度:平均価格は重要ではありません。最高価格や最低価格が埋もれてしまいます。
② 日本は、アジア各国と比較して高い? 安い?
解像度:適切です。地理的に近く、アジア各国は身近な存在です。
重要度:アジアだけが重要な理由が見つかりません。
③ 日本は、主要国と比較して高い? 安い?
解像度:適切です。主要国は小学3年生の知識レベルにマッチしています。
重要度:高いです。最高価格のスイスや最低価格の台湾も情報として必要です。
また、アメリカやフランス出身の友だちが同じクラスにいるので、身近に感じています。
サッカー少年にとって、ブラジルは憧れの国です。カタールは2022年サッカーワールドカップ開催地です。
④ 日本は、アメリカより高い? 安い?
解像度:適切です。しかし、アメリカだけでは比較国が少な過ぎます。
重要度:アメリカだけが重要な理由が見つかりません。
⑤ 日本は、世界55ヵ国中で何位?
解像度:高過ぎます。小学3年生では知らない国が半数以上です。
重要度:知らない国の価格や順位は重要ではありません。
今回は「③ 日本は、主要国と比較して高い? 安い?」という問いを設定します。
なので、「日本のビッグマック価格は、主要国と比較して安い方である」ということをメッセージとしてグラフを作ります。
ノイズを減らし、メッセージを強調する
エクセルを用いて、デフォルト状態のグラフから、3秒でメッセージが伝わるグラフを作っていきましょう!
物足りなさの理由
グラフが完成しました!
なんとなく物足りなく感じるかもしれませんが、安心してください。
センスのいいグラフとは、3秒でメッセージが伝わるグラフだということを思い出してください。
読み手の立場になり、メッセージが伝わるかどうか確認してください。
・メッセージは1つか?
・ノイズはないか?
・視線誘導できてるか?
この3つができていれば、物足りなさを感じたとしてもだいじょうぶです。
グラフが、データを理解するための仲介者として完璧に機能した時、
そこにデザインが介在していることを認識できなくなります。
まさに、透明になってしまうのです。
読み手にとって透明なら、作り手側は物足りなさを感じてしまうのも当然ではないでしょうか。
まとめ ~信念と知性ある行動を「勇気」と呼ぶ ~
ここまで読んだあなたには、センスのいいグラフを作る知性が身に付いています。
さらに、「わかりやすさこそ正義」という信念もある。
信念に基づく知性ある行動を、人は「勇気」と呼びます。
読み手は、読まない・信用しない・行動しないというスタンスですが、敵ではありません。愛ゆえに、厳しい試練を与える父親のような存在です。
勇気を持って、この試練を乗り越えてください。乗り越えた先には、センスのいいグラフという明るい未来が待っています。
この記事が、あなたに少しでも勇気を授けることができたら幸いです。